中国語を学習し始めて、最初に出会う難関、拼音(pin yin ピンイン)。
ピンインには、英単語と同様に、「綴りと発音が一致しない問題」が存在する。
ピンインの発音に関する多くの例外規則(uのウムラウトの有無とか、特定の場合のピンイン表記の省略)が存在するため、日本人にとっては似たように聞こえてしまう中国語の発音と相まって、音と綴りの関連付けに何ヶ月も費やしてしまった。。
発音と表記が一致しているほうがその言語の学習が楽になりますよね。
ですので、台湾の中国語である台湾華語もしくは国語(台湾での普通話の呼称)で主に使われている「注音符号」である「ボポモフォ」を利用すると良いと思いました。
注音符号
参考:注音符号「ボポモフォ」
注音符号は、中国語の発音者の、発音しようとする意図を、忠実に記号へと変換しているため、ピンインでは悩みの種であった例外規則が、ほぼ存在しない。
「ほぼ」と言ったのは、これは個人的な考えだが、声母(子音)→介音→主母音→尾音へと調音点が移動する際に、自然な流れで発音不可能な音は省略されたり、または発音可能な音へと変化したりする。これは誰がやってもそうなるものであり、初学者がやってもそのようになるし、なるようにしかならないので、そのことは自然に受け入れられる現象だ。(つまり意識しなくでもできるということ。意識しなくて良いということ。)それは注音符号の通りに発音されていなくてもそのままにすれば良いのだ。注音符号の通りに読んだら自然に誰でもそのようになってしまうわけだ。ピンインでは、結果として出てきた変化済みの発音を、無理やり記号で表現しようとして例外表記が発生してしまっている。
参考:韻母(介音、主母音、尾音)
どういうことか見てみましょう。
下記は、漢字・拼音・注音符号の比較です。
(その右に、/ /で示したのは拼音とIPA発音記号を混ぜたもので、注音符号を私独自の認識で表したものです。)
「注音符号は、何も考えずに『見たまま』をそのまま常に同じように発音しようとすればいい。発音しにくかったら無理しなくてもいい。」ということが理解できるでしょうか?
ピンインのboについて。
(b p m f のような唇先音の声母は、介音wと同じ位置で調音するため、ㄅㄨㄛ/b w o/と発音されるはずであっても、結局ㄅㄛ/b o/と同じ音に聞こえるため、介音wの表記を省略してもいいという判断を誰かがして、buo ではなく ピンインではbo という表記になったと思われる。注音符号でも、この介音をが省略されている。この省略によって混乱する人はいないでしょうから、問題なし。
下記は、漢字、拼音、注音符号、国際声音記号の順。
注音符号は、そのまま無理やり読むだけでいいことがわかりますかね。ピンインのような変な例外を知らなくても正しい発音になりやすいのではないでしょうか。
博 bo ㄅㄛ /b o/
复 fu ㄈㄨ /f w/
(日本語読みだと フ。 fは唇で調音+w唇先端音。)
護 hu ㄏㄨ /h w/
(日本語読みだと フ hは喉の奥で調音+w唇先端音。)
和 he ㄏㄜ /h ə/
(日本語読みだと フー hは喉の奥で調音+əあいまい母音。)
(ぅお と おう)
多 duo ㄉㄨㄛ /d w o/
都 dou ㄉㄡ /d ou/
↓(ㄜは、日本語の「うあ」に近い音。英語では「あいまい母音」に相当するか。発音の際に、日本人が話す際に、このあいまい母音を唇先音のㄨ/w/とはハッキリと区別しなければ、聞いている中国人は混乱する。)
餓 e ㄜ /ə/
課 ke ㄎㄜ /k ə/
車 che ㄔㄜ /ch ə/
↓(ㄧは 英語のyield /jíːld/ の /ji/の部分の音。以下の例では尾音nとŋで、最後に舌がどこに接触して停止するかで、途中の音が変わる。)
件 jian ㄐㄧㄢ /j y æn/
(語末では、舌は前歯の裏で停止。調音点が前方に留まる都合で、実際に口から発音される音が、イアンではなくイエンになってしまう。それで良い。相手にもそう聞こえる。イ・ア・ンのアがエになってしまって良いのだ。最後に舌を前歯の裏に停止させようという意識があれば、自動的にそうなるのである。)
讲 jiang ㄐㄧㄤ /j y ɑŋ/
(語末は鼻音なので、舌は軟口蓋の奥で停止。調音点が前方から後方へ移動する都合で、イアンになる。最後に舌を軟口蓋の奥にくっつけて停止させようという意識があれば、自動的にそうなるのである。それで良い。)
音 yin ㄧㄣ /y ən/
(語末では、舌は前歯の裏で停止。語を発音する全ての時点で、調音点が口の前方に留まる都合で、イえンではなくイいン になってしまう。それで良い。成り行きに任せれば良い。注音符号のㄣとは、「あいまい母音から開始して、舌を前歯の裏に停止させよ」という、舌の動きの指定であり、発音すべき音を指定しているのではない。)
影 ying ㄧㄥ /y əŋ/
(語末では、鼻音なので、舌は軟口蓋の奥で停止。調音点が前方から後方へ移動する課程で、イえンという音になる。というかなってしまう。それで良い。)
行 xing ㄒㄧㄥ /x y əŋ/
ネイティブが言うと「シユン」と聞こえる場合が多い。ユ音は舌が前方(シ音)から後方(ン鼻音)へ移動する際に、それをゆっくり行った場合に聞こえてしまう経過音である。その成り行きで出てしまう音を、そのままに出せば良い。
↓(ㄩは 英語のyou /ju/ の /j /の部分の音。注音符号では 、ピンインに存在する ü の表記上の特例など気にしなくていいのである。)
去 qu ㄑㄩ /q y/
球 qiu ㄑㄧㄡ /q y ou /
(拼音ではqiou の o が省略されて qiu と例外的な表記をされるが、注音符号では特に何も省略されない。観たまま読めば正しい発音になる。ピンインだとそのまま読むと「チウ」になってしまい、なんとその発音は間違いとなる。ひっかけ問題かよ。)
雨 yu ㄩ /y/
(介音のみで出来ている。注音では表記の通り介音 /y/ のみを発音すればよい。ピンイン(yu)だと「ユー」と発音するのかと考えてしまうが、なんとそれは間違いとなる。)
旅 lü ㄌㄩ /l y/
声母+介音
↓(ㄨは 英語のwolf /wˈʊlf/ の/w/の音。)
出 chu ㄔㄨ /ch w/
声母+介音 (いわゆる、英語学習で言うところの、子音+半母音。)
吃 chi ㄔ /ch /
(中国語の世界観では、この音は声母だけで出来ていると言える。【英語では、これは子音+母音なのだが。中国語にその概念は無い。】この声母の口の形を維持し続けて声を出せばよい。)
租 zu ㄗㄨ /z w/
自 zi ㄗ
(この音も声母だけで出来ていると言える。声母の口の形を維持し続けて声を出す。)
路 ㄌㄨ /l w/
服 fu ㄈㄨ /f w /
贵 gui ㄍㄨㄟ /g w əi /
(ピンインを信じて「グイ」と発音すると間違いとなる。正解は「グゥェィ」で、エの音は省略してはいけない。注音符号ではエの音が省略されていない事が見てわかる。)
论 lun ㄌㄨㄣ /l w ən /
(ピンインを信じて「ルン」と発音するのは間違いだ。正解は「ルゥェン」だ。これも注音符号ではエの音が省略されていない事が見てわかる。)
このように、注音記号で表記すると、例外表記など無しに、非常にシンプルに理解できます。見たままを発音しようとすればよく、発音が難しい部分は舌の動きを自然の成り行き任せにしておけば正しく発音されるはずです。
また、これらを見ていて思ったのは、自分は「う」で混乱していた、ということ。
日本人が/wu/と言おうとして「う」というと、中国人には「餓 e」に聞こえるのかも。
「出」チュウ、を中国人に通じさせるためには、口をすぼめてさらに尖らせて、さらに口の中を広くして、喉の奥で「w」って言わないといけない。
でも「去」のような「ゆぃ」ü系の音は口を尖らせてはいけない。
つまり、これらが特に混乱する。↓
出租車 chu zu che ㄔㄨ ㄗㄨ ㄔㄜ (唇突→突→あいまい)
(チューズーチャー)
自行车 zi xing che ㄗ ㄒㄧㄥ ㄔㄜ
自行车 zi xing che ㄗ ㄒㄧㄥ ㄔㄜ
(ズーシンチャー)
出去 chu qu ㄔㄨ ㄑㄩ (突→非突)
(チューチュ)
あと、自分は、「h」(喉の奥で調音)と「f」(唇と歯で調音)の発音があやふやだった。
复 fu ㄈㄨ
護 hu ㄏㄨ
つまり、自分が正しく発音できていなかった音は下記になるかと。(以下の//ではIPA発音記号で表記しています。)
介音と呼ばれる次の音
ㄨ/w/ 「う」
(特にこの音をしっかり発音せねばならない!あいまい母音と似たような音になってしまっていた。)
ㄜ /ə/ 「ぅあ」(英語の、あいまい母音(シュワー)に近い。)
ㄩ/j/ 「ぃゆ」
(「口笛を吹くような」この音は、「ゆ」の発音に近い。)
特定の声母(子音)の後だけに現れる下記の「う」のような音
(注音符号では表記されない。表記をしなくても中国人は正しく発音可能なのである。)
自 zi ㄗ /z ɨ/
(ズーと発音する)(東北訛りのズーに近い)
吃 chi ㄔ /tʃ ɨ/
(大陸では チーっぽく、 台湾では ツー と発音する)
最初っから注音符号ボポモフォで学習していれば、発音の習得時間を節約できたかもしれない。。。
注音符号の欠点を強いて挙げるなら、パソコンでは、注音符号がキーに印刷された専用のキーボードじゃないとテキスト入力が出来ないことですかね。ウチの東京の事務所に台湾から出張してきたスタッフが困ってました。この場合、拼音を知ってれば問題なく、通常の日本語キーボードでも入手できますね。
IPA 国際音声記号
母音
子音
出去 chu qu ㄔㄨ ㄑㄩ (突→非突)
(チューチュ)
あと、自分は、「h」(喉の奥で調音)と「f」(唇と歯で調音)の発音があやふやだった。
复 fu ㄈㄨ
護 hu ㄏㄨ
つまり、自分が正しく発音できていなかった音は下記になるかと。(以下の//ではIPA発音記号で表記しています。)
介音と呼ばれる次の音
ㄨ/w/ 「う」
(特にこの音をしっかり発音せねばならない!あいまい母音と似たような音になってしまっていた。)
ㄜ /ə/ 「ぅあ」(英語の、あいまい母音(シュワー)に近い。)
ㄩ/j/ 「ぃゆ」
(「口笛を吹くような」この音は、「ゆ」の発音に近い。)
特定の声母(子音)の後だけに現れる下記の「う」のような音
(注音符号では表記されない。表記をしなくても中国人は正しく発音可能なのである。)
自 zi ㄗ /z ɨ/
(ズーと発音する)(東北訛りのズーに近い)
吃 chi ㄔ /tʃ ɨ/
(大陸では チーっぽく、 台湾では ツー と発音する)
最初っから注音符号ボポモフォで学習していれば、発音の習得時間を節約できたかもしれない。。。
注音符号の欠点を強いて挙げるなら、パソコンでは、注音符号がキーに印刷された専用のキーボードじゃないとテキスト入力が出来ないことですかね。ウチの東京の事務所に台湾から出張してきたスタッフが困ってました。この場合、拼音を知ってれば問題なく、通常の日本語キーボードでも入手できますね。
IPA 国際音声記号
母音
子音